経営者は毎日が判断の連続です。
私が考える経営の本質は、胸を張れるかです。
最後に残るのはこれです。
粉飾やごまかしのほうが簡単な場面もありますが、そういう会社は、ある日一気に崩れます。
ぶれは必ず現場に伝染します。
社長がぶれている会社は、現場もぶれます。
現場がぶれると、品質も挨拶も後始末もクレーム対応も、全部が崩れます。
逆に、社長がぶれない会社は現場も強くなります。
この違いを嫌というほど見てきました。
ぶれない判断軸は五層構造である
今回ここまで、私は5つの項目で話をしてきました。
行動指針、使命観、社是・経営理念、個人の人生理念、宗教・哲学。
私はこれを判断軸の“五層構造”と呼んでいます。
① 行動指針 :今日何をするか(現場の当たり前)
② 使命観 :なぜそれをするのか(仕事の意味)
③ 社是・経営理念:会社としての正しさ(組織の羅針盤)
④ 個人の人生理念:社長として、どう生きたいか(根本の価値観)
⑤ 宗教・哲学 :死生観・宇宙観(更に奥の土台)
この順で深くなっていきます。
面白いのは、深層がぶれると浅層も必ず崩れることです。
① 行動指針:当たり前を当たり前以上に
昔から云ってきました。
派手さはありませんが、経営は積み重ねです。
挨拶、身だしなみ、整理整頓、時間、約束、後始末。
こうした当たり前が出来ていない会社が意外と多いのです。
だからこそ出来ている会社は強いのです。
当ブログでも以前紹介しましたが、私が好きな例えがスポーツ選手による国旗の扱いです。
走り終わったあと、国旗をそのまま放り投げるのか、丁寧に畳むのか。
ここに人間性が出ます。
会社も同じです。
最後の一手に出るものです。
ぶれない会社は最後まで丁寧です。
② 使命観:誰のための仕事かを忘れない
使命観がない仕事は作業、即ち云われたことだけをやる状態です。
云われたことだけやっていたら、経営には必ず限界が来ます。
私はいつも現場第一線の社員に話しています。
・目の前のお客様を喜ばせるために、何ができるかを考え抜いて欲しい
創意工夫で時間を生み、その時間でお客様を喜ばせる、これが仕事です。
一方で管理職にはこのように云っています。
・当社が世の中のために何ができるかを考え抜いて欲しい
社会課題を見つけて解決する、既存サービスで間に合わなければ創り出す。
ここまで考えると会社の未来が変わっていきます。
仕事を「苦労」「意義ある挑戦」に変えるのが使命感です。
③ 社是・経営理念:迷ったときの羅針盤
逆説的ですが、経営判断の価値は迷うところにあります。
迷わないなら、社長は不要です。
短期の利益か、長期の信頼か、波風を立てずに済ませるか、云うべきことを云うか。
こういうとき、私が頼りにするのが社是・理念です。
綺麗ごとではありません。
迷ったときに戻る場所です。
掲げるだけではなく、浸透させる仕組みが欠かせません。
当ブログ、各種会議、玉手箱研修会、給料明細書に同封するメッセージ、新春の集い、管理職の背中。
言葉よりも空気で伝わります。
社長が本気で体現しなければ、社員に伝わる筈もありません。
④ 個人の人生理念:経営は生き方そのもの
経営は人生の延長だと思っています。
従って社長の「どう生きたいか」は経営判断に必ず出ます。
一番誤魔化せない部分です。
本性は追い込まれたときに現れます。
ここまでの連載で、個人の人生理念として一番強く感じたのは家庭の話題でした。
妻に「ありがとう」が云えるかどうか。
単なる美談じゃなく、経営の根幹だと思っています。
経営者の家庭が乱れている会社が安定している例は少ないようです。
社員間は仲良くして下さいと云う一方で、家庭がギスギスしていたら説得力などありません。
だから私は、家庭を最小単位の経営だと思っています。
人生理念は社長の判断軸の中心にありますから、ここがぶれていないのは強い社長です。
⑤ 宗教・哲学:最後のブレーキ
聞く人によっては難しく感じるかもしれません。
ただ私は、ぶれない「土台」だと思っています。
死を意識した瞬間、くだらない判断ができなくなります。
死はいつか必ず訪れますから、後悔したくないのです。
だから胸を張れることを選びたいのです。
輪廻転生があるかないかは証明できませんが、あると思ったほうが楽に生きられると考えるなら、それも一つの哲学です。
不安を拾い上げて生きるより、今できることに集中したいのです。
経営も同じです。
不安を集めて止まるより、正しいことを正しくやって動き続けるのです。
失敗したら直せますし、やらない後悔のほうが重いものですから。
以上、私の中ではとてもシンプルです。
・人として正しいことを選ぶ
・その正しさを今日の行動に落とす
・誰も見ていなくても最後まで丁寧にやる
・迷ったら理念に戻る
・そして家庭と人を大切にする
これを続ける限り、ぶれません。
逆に手放した瞬間から、会社は静かに崩れ始めます。
私はまだまだ修行中です。
だからこそ毎日、自分に問いかけています。
・この判断は、理念に合っているか?
・この選択は、胸を張れるか?
経営者が求めなければならないのは、派手な勝利じゃありません。
日々の当たり前を守り続けることです。
その積み重ねが、社員を守り、お客様を守り、会社を未来に残すのだと、私は思っています。